Escape86 イズミールの夜は更けて ?トルコ

エフェソス旅行記

delfinさんの旅行記

テーマ:世界遺産・遺跡・秘境

旅行記タイトル:Escape86 イズミールの夜は更けて ?トルコ

旅行期間:2005/07/10〜2005/07/11

旅行記の内容: この国を訪れるまで、トルコの人々があたりまえのように楽しんでいる飲み物は“トルココーヒー”だと思っていた。

しかし実際に街でも村でも遺跡でも目にしたのは“チャイ”という名の紅茶だった。


 小ぶりなガラスのコップに熱い紅茶を注ぎ、角砂糖を1、2個落として飲む。
食後になれば、人が集まれば、客がくれば、ひと息つくならば、といった感じでこの国ではなにしろ“チャイ”なのだ。
暑い夏といえど、彼らの飲み物が変わることはない。

立派な口ひげを蓄えた男どもが小さなグラスから熱いチャイをすする姿は、眉間にシワを寄せながら熱いお茶をすする日本男児に通じる感じがして、おかしくもあり、懐かしい感じがした。


 チャイはお年寄りから若い人まで、砂糖を入れることを除けば、日本の緑茶のように愛されている飲み物だ。

しかし食後はお茶でさっぱり日本式、という感じで砂糖を入れずに飲むと、現地の人からは奇異の目で見られ……。



エーゲ海に面したトルコ第3の都市・イズミール。
リゾートとしても名高いこの街は、広大な遺跡を有するエフェス(現地ではエフェソスという)からも近く、また近隣に多くの遺跡が点在することから旅行者が多い街でもある。


 昼間の遺跡巡りを終え、翌朝にはこの街を離れようかと考えていた。

寝るにはまだ早く、一人旅にとって一番退屈な時間になった。
たいがいは他の宿泊者と話しをしたり、旅の情報交換をして、退屈な夜の時間を貴重な楽しみの時間に変えていたのだが、この宿は地元客がほとんどで、残念ながらトルコ語もできない身にとっては部屋でおとなしくするしかない状況だった。

そんな時、ふと、昼間の風景を思い出した。

ホテルの目の前にあった公園で移動遊園地の設置工事をしていたのだ。

「そこへ行ってみよう」
 なにがあるのかはサッパリわからなかったが、部屋で退屈と顔を突き合わせているよりはましな気がした。


 移動遊園地は予想以上に規模が大きく本格的で、乗り物は10種類以上あり、どこも列をなしていた。

なかでも人気の乗り物はメリーゴーラウンドらしく、小さな子供たちが列を作っている。

綿菓子やアイスを売っている店の前では、家族連れが列をなしている。

どこの国でも遊園地の風景は微笑ましい。

散歩だけのつもりだったが、観覧車で街に別れを告げるのも一興、と思い、チケット売り場の列に並んだ。

「大人1枚」
書かれてた金額を切符売り場の小さな窓口に差し出した。

その瞬間、手首をつかまれた。

「XXXXXX」
早口でなにを言っているのかわからない。

小さな窓口に入れた手はガッチリつかまれ動かない。

わけがわからなかった。

「おまえは中国人か? 韓国人か?」
腕を引き戻そうとしながら、ようやくその男の言っていることが聞き取れた。

「は? 日本人だよ」
「そうか」
腕が急に自由になった。

「なんなんだよ?!?!」
「日本人ならいい! 日本人は仲間だ、同胞だ」
「は?」
「日本はロシアからトルコを救ったんだ」
いまだ、わけがわからなかった。

「悪かったな、こんなところに日本人はこないから、日本人とは思わなかったんだ」
「日本は小さい国なのに、大きなロシアに戦いを挑んだ。
おかげでロシアに攻められていたトルコは窮地を脱することができたんだ」
窓口のオヤジさんはどうやら日露戦争とトルコの関係を語っているようだった。

「日本のおかげでおれのじいさんは生き延びたんだよ。
だからおれもいるってワケだ」
「驚かせて悪かったな、あっちでチャイでも飲もう、同胞よ!」
売場から出てきたオヤジさんは大きな声で笑った。


イズミールの夜は更けていく。






文・写真 
 神奈川県生まれ。
シンガポールの現地旅行会社勤務を経て、帰国。
海外専門ツアーコンダクターとして動き出すと同時に、フリーランス・ライターとしても始動。
旅行記事はもちろん、得意のアメリカン・スポーツに関してもカメラを担ぎ、ひとりで取材に駆け回る。
TOUCHDOWN PRO マガジンに連載を持ち、Number、Sportiva、地球の歩き方にも寄稿。
旅行業の経験を生かして、即日飛び立つことから“空飛ぶライター”の異名をとる。





Escape
発行周期:毎週木曜日、特集号(不定期)、ショッピング号
発行元:株式会社 サイバーエージェント

写真: この国を訪れるまで、トルコの人々があたりまえのように楽しんでいる飲み物は“トルココーヒー”だと思っていた。

しかし実際に街でも村でも遺跡でも目にしたのは“チャイ”という名の紅茶だった。


 小ぶりなガラスのコップに熱い紅茶を注ぎ、角砂糖を1、2個落として飲む。
食後になれば、人が集まれば、客がくれば、ひと息つくならば、といった感じでこの国ではなにしろ“チャイ”なのだ。
暑い夏といえど、彼らの飲み物が変わることはない。

立派な口ひげを蓄えた男どもが小さなグラスから熱いチャイをすする姿は、眉間にシワを寄せながら熱いお茶をすする日本男児に通じる感じがして、おかしくもあり、懐かしい感じがした。


 チャイはお年寄りから若い人まで、砂糖を入れることを除けば、日本の緑茶のように愛されている飲み物だ。

しかし食後はお茶でさっぱり日本式、という感じで砂糖を入れずに飲むと、現地の人からは奇異の目で見られ……。



エーゲ海に面したトルコ第3の都市・イズミール。
リゾートとしても名高いこの街は、広大な遺跡を有するエフェス(現地ではエフェソスという)からも近く、また近隣に多くの遺跡が点在することから旅行者が多い街でもある。


 昼間の遺跡巡りを終え、翌朝にはこの街を離れようかと考えていた。

寝るにはまだ早く、一人旅にとって一番退屈な時間になった。
たいがいは他の宿泊者と話しをしたり、旅の情報交換をして、退屈な夜の時間を貴重な楽しみの時間に変えていたのだが、この宿は地元客がほとんどで、残念ながらトルコ語もできない身にとっては部屋でおとなしくするしかない状況だった。

そんな時、ふと、昼間の風景を思い出した。

ホテルの目の前にあった公園で移動遊園地の設置工事をしていたのだ。

「そこへ行ってみよう」
 なにがあるのかはサッパリわからなかったが、部屋で退屈と顔を突き合わせているよりはましな気がした。


 移動遊園地は予想以上に規模が大きく本格的で、乗り物は10種類以上あり、どこも列をなしていた。

なかでも人気の乗り物はメリーゴーラウンドらしく、小さな子供たちが列を作っている。

綿菓子やアイスを売っている店の前では、家族連れが列をなしている。

どこの国でも遊園地の風景は微笑ましい。

散歩だけのつもりだったが、観覧車で街に別れを告げるのも一興、と思い、チケット売り場の列に並んだ。

「大人1枚」
書かれてた金額を切符売り場の小さな窓口に差し出した。

その瞬間、手首をつかまれた。

「XXXXXX」
早口でなにを言っているのかわからない。

小さな窓口に入れた手はガッチリつかまれ動かない。

わけがわからなかった。

「おまえは中国人か? 韓国人か?」
腕を引き戻そうとしながら、ようやくその男の言っていることが聞き取れた。

「は? 日本人だよ」
「そうか」
腕が急に自由になった。

「なんなんだよ?!?!」
「日本人ならいい! 日本人は仲間だ、同胞だ」
「は?」
「日本はロシアからトルコを救ったんだ」
いまだ、わけがわからなかった。

「悪かったな、こんなところに日本人はこないから、日本人とは思わなかったんだ」
「日本は小さい国なのに、大きなロシアに戦いを挑んだ。
おかげでロシアに攻められていたトルコは窮地を脱することができたんだ」
窓口のオヤジさんはどうやら日露戦争とトルコの関係を語っているようだった。

「日本のおかげでおれのじいさんは生き延びたんだよ。
だからおれもいるってワケだ」
「驚かせて悪かったな、あっちでチャイでも飲もう、同胞よ!」
売場から出てきたオヤジさんは大きな声で笑った。


イズミールの夜は更けていく。






文・写真 
 神奈川県生まれ。
シンガポールの現地旅行会社勤務を経て、帰国。
海外専門ツアーコンダクターとして動き出すと同時に、フリーランス・ライターとしても始動。
旅行記事はもちろん、得意のアメリカン・スポーツに関してもカメラを担ぎ、ひとりで取材に駆け回る。
TOUCHDOWN PRO マガジンに連載を持ち、Number、Sportiva、地球の歩き方にも寄稿。
旅行業の経験を生かして、即日飛び立つことから“空飛ぶライター”の異名をとる。





Escape
発行周期:毎週木曜日、特集号(不定期)、ショッピング号
発行元:株式会社 サイバーエージェント

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